先日この本を読み終えた。塩野七生さん、1937年生まれとあるので、御歳72歳(かなり意外です)となられる、文章を拝見すると粋で素敵な女性。七生さんの古代ローマへの洞察は当然さることながら、非常に解りやすい文章なので、ローマの歴史がそんなに知らなくても読みやすい。もっと知りたくなったら彼女の大作「ローマ人の物語」を読めばいい。
この本のローマ帝国の歴史に興味を抱いたのは彼女のこんな文章から始まった。
“西欧的な価値観やイデオロギーが崩壊しつつある現在、ローマ人の行き方は宗教やイデオロギーとは無縁だった…”
古代のローマの人々はキリスト教がなかった時代の人々。それでも非常に優れた政体を作り上げ、北ヨーロッパにまで勢力を拡大していく。
ローマ帝国の歴史は様々な変化していくのだが、それも現実主義なローマ人ならではの柔軟性、さらに失敗してしまった時、その敗因が自分たち自身に有ればそれを直視し、単に反省するだけでなく、政治改革として結びつけていくという強さがあった。
この本の中には数々の教訓が刷り込まれている。もちろんローマ史は帝政時代のネロによる堕落政治への批判など、学生時代の世界史などで見聞きした覚えがある。
ただこの本を読んで感じた事は、なにも政治に特化して考えられることではない。冷静に読み返してみると、七生さんのお話は至極当然のことでもある。でも、本書にも載っているカエサルの生前のことばにあるように、
“「人間ならば誰にでもすべてが見えるわけではない。多くの人は自分が見たいと欲する事しか見ていない」”
自分もそうだが人はついつい、都合の良い解釈をして事を済ましてしまう傾向があるのかも。
もう1つ、カエサルのことばにこんなことが記されていた。
“「どんなに悪い事例とされていることでも、それが始められたそもそものきっかけは立派なものであった」”
そしてさらに七生さんの言葉を借りると、カエサルは数々の改革を打ち出した人なのだが、そのカエサルが行おうとした真の改革は、リストラクチャリングだったのだそう。
まず自分たちが持っている資質や特質の、どれを生かし、どれをすてて組み合わせて行くかという再構築の形をとることだったと。
そしてこの改革の神髄はローマ人が王政時代から連綿と持ち続けてきた「敗者をも同化する」という精神(「寛容」)を活かす努力を最大限に行うことだったと。
この本の中では政治に重きをおいての内容ではあるが、「寛容」…すべてにおいてあてはまりますね。
自分はものすごーくゆるい普通の凡人だが(笑)、物事の善悪や、本当に全体のバランスの中で必要、不必要といったことがきちんと果たされているのかどうかという事を、せめてできるだけちゃんと正しく見分けられる凡人になりたいもの。だって選挙のときとか困りますからね。
なのでこの本はローマ政治と日本の政治に言及していることが多いが、それに留まらず、自分自身に置き換えての教訓だったり、環境問題に対してのシステムについてのあり方の教訓だったり、大なり小なり様々な場面展開においてもたくさんの知恵を与えてくれるように思う。
すごく興味深く、一気に読んでしまった。